読書ログ

気ままに読書感想文を書いていきます。良い本ばかりなのに、自分のアウトプットのレベルが低くてちょっとつらい。

社会を理解する方法は「共感・空気を読む」だけじゃないんだよ、というメッセージが優しい「『しがらみ』を科学する」(山岸 俊男著)【読書ログ】

要約

空気を読めという圧力が辛い、共感できなくて生きづらい。それでもいい、社会や世間は科学的アプローチで理解しても良い。社会や世間の生きづらさ(=しがらみ)はどいうものなんだろう、ということを集団心理学や社会心理学の観点から説明してくれる。

また、研究の手法を説明して「混沌として得体がしれないもの」に対しどうアプローチしていくかなどの事例を出して、共感や「空気を読む」をしなくても、社会はこうやって理解すればいいんだよ、というメッセージが溢れていた本でした。

 

しがらみ=行動をしばるもの、レッテル貼りをしてくるもの

タイトル通り、「しがらみ」とは何なのかを色々な事例から説明してくれる。

怖いのは、「みんながそうだと信じたら、それが真実になってしまう」ということ。怖いね。。

本著を読むと「予言の自己実現(あるいは予言の自己成就)」「ピグマリオン効果」など社会心理学の知見も得ることができる。

その知見も面白いのだけど、「社会ってこんな感じで思い込みというか、そういうもので成り立っている部分もあるから、まあそんな怖がらなくて良いんだよ」というメッセージが溢れているように感じた。おそらく優しい人なんだろうな。

 

「社会に出るのが何となく不安だ。」

そう思っている高校生や大学生はたくさんいるのではないでしょうか。ぼくはこの本を、そういった人たちに読んでもらいたいと思っています。

社会を理解できれば、不安にならなくてすむはずだと思うからです。

  

感想

いじめなどの集団心理がこういうふうに起こってしまう、などを非常にわかりやすく説明してくれる部分がある。

「人ってそういう風に認識して、世間の空気が作られてしまうのだろう」という引き出しを持っておくことは今後役に立つと思う。

本筋からはズレてしまうけど「まわりからの偏見にさらされていると本当にそういう偏見に応じた行動をするようになってしまう」という集団心理学?の見解は知っておいたほうが良い。

たしかにあるコミュニティで「できないやつレッテル」を貼られてしまっても、別のコミュニティに行けば全然価値観が変わるということはある。

決めつけてくる、レッテルを貼ってくる人からは逃げた方が良い。空気が作られてしまうと、自分もそれに応じた行動をとってしまうようになってしまう。

 

そういう「しがらみ」の対応の仕方というか、知識の引き出しを持っておくことで心の余裕ができるのではないかな、という本でした。

 

 

 

データや数字だけじゃ心に『刺さる』ものを作れないという話『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(山口 周著)より【読書ログ】

 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(山口 周著)を読む。

「エリートになりたいいい」とは思ってなかったが、絵画とか映画とか芸術に触れるのは好きなので手に取る。

要約(個人的見解)

法整備やシステム・ルールの整備が追いつかない混沌とした世界の中で経営を引っ張っていくにはデータ・数字に依存するだけではなく、美意識が必要。

 

もっとざっくり要約

ここまで個人のニーズが多様化したら数字だけに頼るのは限界

法整備が追いつかないから、自身の中の善悪の判断基準をもつことが重要

 

あらすじと感想

タイトルの「世界のエリートはなぜ『美意識』」を鍛えるのか?」という問いに対し

昨今の市場の状況、巨大企業の意思決定のあり方、数字やシステムなどサイエンス的なものだけに頼った意思決定の弱点などの事例を出しながら、美意識を鍛えることの重要性を説き、「こういう理由でエリートはこぞって美意識を鍛えるんです。」という本でした。

 

アップルやディズニーなど巨大企業の経営判断の事例は面白かった。

 

美意識の鍛え方

ちなみに「美意識の鍛え方」も本著では触れています。

絵画を見て解釈する、文学や詩を読む、哲学に触れる、など。要は「A=B」だと断定できず色々な解釈ができるもの、自分の想像力の幅を広げられる作品に触れろ、ということなのかな。

 

ここで言う美意識とはアート的教養だけではなく倫理観、人としての善悪の判断、これが好きであるという志向、こういう風に世界を変えたいんだというエゴ、そういったものも含んでいるんだろうなと解釈しました。

 

。。。つまり好きなものを追求するのってやっぱり正義?

 

会社員生活(ある程度ルールが決まっているはずの社会的組織の中での生活)でも正解がないことってあるよね

特に「法整備が追いついていない」から個人の判断基準は大事という部分は「本当にそう。。。」と共感しながら読みました。

普段仕事をしていても「決してルール違反ではないけどこれってどうなんだろう(良いことではないのではないか?)」というということにぶち当たることがあります。

きれいごとばかり言っていたら競合企業に勝てないことや利益につながらないこと、また組織がうまく回らないこともあるので、いちいち行動をとめるわけにもいかずバランスですが

 

幸いにも上司や組織のトップが「いいから(とにかく利益のために)(慣習だから)、やれ」というタイプではなく話を聞いてくれ、顧客のためには最善を尽くそうと一緒に動いてくれるタイプなので、私は幸運な方なんだと思います。

 

 思い出す入学式での大学教授の言葉「『教養』は他社を理解するスキルです。」 

 「あなた方は、このシステム化された受験競争を勝ち抜くために今まで多大な労力を勉強に費やし、見事この大学に入学したと思います。これからは、システムに勝ち抜くためではなく、他社を理解するために、たくさんの知識を学び、考える力を身に着けなさい。それは教養を身につけるということです。」

という言葉を大学の入学式でもらったことを思い出しました。この時教授が言っていた「教養」とこの著書で言われている「美意識」には近いものを感じます。

 

つまりさ、「数字がそうだから」って断絶するのではなくて、なんかようわからんものを「ようわからんもの」として認めて前に進む力だよね。